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どうすれば成功できるのか 「開業前にあなたが不安に感じること」について解説中です。前回は、"実務経験は必要か"というテーマでお話ししましたね。前回の結論を簡単に申し上げておくと、「実務経験がなくても特段困ることはない。実務経験のために費やす2〜3年の時間の方が惜しい」となります。ただ、誤解しないでいただきたいのですが、私は「実務経験を積むことは無駄だ」と言っているのではありません。どんな経験だって、ないよりはあったほうがよいに決まっています。私が申し上げたいのは、「実務経験がなければ絶対に成功できないというものではない」ということなのです。 さて、今号のテーマは、「社労士って食えるのか」です。これから開業社労士の道を踏み出そうとお考えのあなたにとって、おそらく一番の関心事ですよね。実際、私が試験に合格したばかりの人から最も多く受ける質問もこれなのです。私と一緒にじっくりと考えてみましょう。 質問自体がおかしい 「社労士って食えますか」。この質問に対する私の答えはいつも決まっています。「食える人もいるし食えない人もいる」です。なんとなく無責任な言い方のように聞こえるかも知れませんが、実際紛れもない真実なのですから、仕方がありません。開業の時は全員が同じスタートラインに立っているのですが、何年かのうちには差がつき、結局成功する人と失敗する人とができてしまいます。結果、「成功する人も失敗する人もいる」としかお答えできないわけです。 明確な回答が見出せないということは、ひょっとしたら質問自体が適切ではないのかも知れませんよね。「社労士って食えるのか」、この、誰もがあたりまえのように口にする質問について考えてみましょう。 この質問を発する人たちは、"社労士"という資格に価値を置いています。難しい試験を突破して勝ち得た資格ですし、また、ものの本を読むと"開業型"の資格であると書いてあることもあって、彼らの意識の中での社労士資格の価値はうなぎ上りです。彼らはこう思っています。 「社労士は大変価値ある資格だから、社労士である自分は世の中のすべての人たちから尊敬されてやまないだろうし、社労士の看板を掲げるだけできっとお金も向こうからどんどん入ってくるに違いない」(社労士は食える) 彼らは確かにそう信じているのですが、でも自分がまだ実際に経験したわけではないので、いま一つ不安です。(社労士は食えないかもしれない) そういった心理状態にある彼らの口からは、必然的に「社労士って食えるのか食えないのか」の質問が飛び出してくるというわけです。 どうやら、この質問に対して明確な回答が見出せない理由はそのあたりにありそうです。多くのひとが信じ込んでいる「社労士資格は価値がある」という常識、この常識自体がひょっとしたら誤っているのかもしれません。もしかしたら、社労士という資格は、なんの価値もないのかもしれません。そうだとしたら、かなりショッキングな事実ということになりますが、本連載の目的は、「事実を知り、対策を立てること」です。事実から目を背けていては、真実は見えてきません。 勇気を出してこの問題の検証に取り組んでみましょう。 社労士資格は価値があるのか 世は社労士資格ブームです。以前は1万人程度で推移していた受験者数も、平成3〜4年頃から急に増えはじめ、現在では4万人が受験するマンモス資格となりました。
受験校の数もどんどん増え、雨後の筍のごとき様相を呈しています。この空前の社労士ブームを作り出した原因は何でしょうか。 もっとも大きな原因は、長引く不況にあると思われます。不景気になると資格がはやるのです。サラリーマン諸氏は、景気が良いうちは安泰ですから、資格などには見向きもしません。しかしひとたび不景気になり、出向、リストラなどが横行すると、途端に「会社を離れても生きていける資格を取ろう」ということになるのです。 ではどの資格を取ろうかと選択するとき、社労士はちょうど"手頃"なのではないでしょうか。合格率は7〜8%ありますから、なんとかがんばれば受かりそうな気がするのでしょう。司法試験や司法書士の2〜3%という合格率は、それと聞くだけで受験する気が失せてしまいますが、社労士ならば"なんとかなりそう"に感じるものです。また、7〜8%は決して"簡単"ではないところもポイントです。「どうせ取るのならそれなりの資格を」と考える人が多いので、仮に20〜30%程度の合格率だったとすれば、これほどまでに人気が高まることはなかったでしょう。 受験校の宣伝が、そこに拍車をかけます。「社労士は独立型資格」、「社労士を取れば未来はバラ色」的広告をさんざん見せつけられ、いやがおうでも、社労士資格を武器に独力で縦横無尽の活躍をしている自分自身をイメージしてしまうのです。いわゆる一つの「マインドコントロール」ということですね。 この状況を冷静に分析してみましょう。 社労士資格の人気が高いことは、すなわち社労士資格の価値があることにつながるでしょうか。答えは間違いなく否です。 (1)人気が高いこと 社労士資格の人気が高いとは言っても、それは多くの人が「社労士なら手頃だし、なんとなく価値がある資格のような気がする」と考えているからであって、社労士資格の価値の証明にはならない。 (2)受験校の宣伝 受験校がいくら「社労士資格は価値がある」とのたまってみたところで、しょせん商売上の宣伝に過ぎない。宣伝というものは、常によいことしか言わないもの。聞こえの良い宣伝文句に躍らされるほど、読者のあなたはばかではないはず。 いかがでしょう。社労士資格が人気がある事実は、決して社労士資格の価値を証明するものではないのです。 それでは、社労士資格の価値という論点に、正面から向き合ってみましょう。あなたが苦労の末に取得した社労士という資格は、本当に価値があるのでしょうか。 試験合格者のその後 社労士資格の価値を推し量るには、試験合格者のその後を見るのが一番です。社労士資格が価値ある資格であって、社労士資格を取得するだけでバラ色の未来が開け、一生楽な生活が送れるのならば、社労士資格の価値は絶大ということになります。もしもそうでないとするならば…。 事実をお伝えします。まず、試験合格者のうち多くの人は開業に踏み切ることなく、せっかく取得した資格をそのまま眠らせてしまいます。実際に開業する人は、試験合格者の中でほんのわずかなのです。でも、この事実は、社労士資格の価値がないことの証明にはなりませんね。開業しなかった人たちは、自分で勝手に「社労士資格は価値がない」と判断してしまっただけなのですから。問題は、開業した人達のその後です。そこに真実が隠されています。 実は、意気込んで開業した人達の多くが、1〜2年で開業社労士を辞めてしまいます。正確な統計はないのですが、私がいろんな開業社労士と接してきた経験から推測すると、1〜2年で辞める人(失敗した人)と、その後も続ける人(成功する人)の割合は、だいたいフィフティー・フィフティーでしょうか。そう、社労士資格を引っ下げて独立開業に踏み切った人の中で、なんと半数の人は、夢半ばで撤退してしまうのです。 この事実を、多くの受験校はひた隠しにしています。それはそうでしょう。こんな事実が世の中に広まったら、受験者数が激減してしまい、受験校は商売になりません。 先に私の例でも書いたのですが、開業後飛込み訪問やDM送付などの営業活動を展開しても、世間の反応は想像以上に冷たいものです。"実は社労士資格にはなんの価値もなかったのだ"との現実に打ちのめされて、多くの人が開業社労士を辞めていくのです。 開業とは、商売をすることである 社労士資格は、それ自体ではなんの価値もないとの結論が出ましたね。「社労士資格は絶大な価値がある」との前提で発する「社労士は食えるのか」の質問は、質問自体ナンセンスであることがご理解いただけたものと思います。 ただ、まあ、これまではあえて否定的なことばかり書いてきましたので、少しだけ社労士資格の弁護もしておきましょう。 社労士資格にもそれなりの価値はあります。たとえば、飛込訪問を敢行するにしても、なんの資格もないどこの馬の骨かわからない人よりは、国が認めた社会保険労務士の方が、社長に合える確率は高くなります。その点が、社労士資格の価値といえます。 でも、社労士資格の価値はあくまでも、そこまでであることを認識しなくてはなりません。社長に会えたとしても、顧問契約を結んでくれるとは限りません。「社労士だ」と言うだけで契約してくれる程、世の中は甘くはありませんよ。それは、失敗していった先輩開業社労士達が身を持って証明したではありませんか。 社長に会うところまでは、"社労士資格の価値"にすがるにしても、その後は、もはや社労士資格はなんら価値を発揮することはありません。社長の身になって考えてみてください。いきなり飛び込んできた人が、社労士だと名乗り、顧問契約を結ばせてくださいと言っています。あなたはまだイメージがわかないかも知れませんが、社労士と顧問契約をすることは、自社のデータをその社労士にすべて公開することを意味します。従業員の給料の額や履歴などの個人データ、さらには、会社の売り上げや利益までをも、です。あなたが社長だったら、見ず知らずの人を、ただ国家資格を持っているという理由だけで、そこまで信用することができますか。 少なくとも、私が社長なら、答えはノーです。 となれば、それ以降は、社労士資格という仮面はかなぐり捨てて、人間対人間として、社長と向き合うことが必要になります。腹を割って話しあい、人間としての自分を社長に信頼してもらう、その努力(能力)が必要なのです。 開業した人達の半数が辞めていく中で、残り半数が成功している秘密は、どうもそのあたりにありそうです。社長に信頼される自分になるとは、どういうことでしょうか。それは、"営業力"を身につけるということです。 これが、今号の結論です。社労士資格それ自体はほとんど価値はなく、試験勉強を通じて培った知識を活かしつつ、"人間として"社長を説得し、顧問契約まで結びつける"営業力"こそが価値があるのです。 営業とは何でしょうか。それは"商売"ということです。開業とは、実は「商売をすること」であったのです。 商売というと、あなたはどうもよいイメージを持たないかも知れませんね。「せっかく難しい試験を突破したのに、程度の低い商売なんかやりたくない」とおっしゃるかも知れません。でも、それは違います。なぜなら、「どんな高尚なことを言ったって、食えなきゃしょうがない」からです。「武士は食わねど高楊枝」という言葉がありますが、高楊枝で気取っていられるのも、せいぜい2〜3日であって、一生飯を食わずに済ませることはできません。社労士で金を稼ぎ、その金で飯を食わなければ、結局開業社労士を続けていくことすらできないのです。 それに、商売をすることは、実は社会貢献をすることです。あなたの顧客はあなたが遂行した仕事に対して、満足をしたからお金を払うのです。顧客を満足させられた、これは取りも直さず社会貢献ではありませんか。社会貢献をしてみんなを幸せにし、ついでに自分も潤う。それが商売というものです(一部例外もあります。あくどい商売はそれ自体が悪ですが、社労士の仕事にはあくどさは微塵もありませんで、ご心配は無用です)。 そろそろ、商売に対するネガティブイメージは捨て去るべきです。 社労士の専門知識の価値 大胆なことばかり書いてきたせいで、書き漏らしたことがありますので、ここで書いておきます。私は、「社労士資格は価値がない」と言いましたが、「社労士の専門知識の価値」までも否定したわけではありません。 苦しい受験勉強によってあなたの頭の中に蓄えられた知識は、相当量に上ります。その知識は、当然のことながら、大変な価値があります。たとえば言えば、あなた自身が、パソコンの「社労士ソフト」のようなものです。社労士関連の知識がすべて頭の中に入っていて、いつでも好きなときに引き出して使えるのですから。あなたは蓄積した知識をそのままアウトプットすることもできますし、そこに"ものを考える人間"として、"情緒"をトッピングすることもできます。 わかりやすく言えば、「この知識はそのまま相手に知らせるよりも、多少オブラートに包んで伝えた方が、相手のためになるな」といった具体に、知識のアウトプットに際して"手加減"することができるのです。この能力はコンピューターにはありませんから、あなたの「社労士ソフト」としての特性は、パソコンソフトをはるかに上回る、いわば"究極のソフト"であるわけです。 その高性能な知識を活かして、存分に社会貢献をしてください。それがひいては商売につながり、あなたの素晴らしい未来を演出することでしょう。再度言いますと、「社労士資格そのものの価値は低いけれど、社労士の持つ専門知識は絶大な価値を持つ」のです。 早くも紙面が尽きてしまいました。商売とは奥深いものですから、まだまだ言い足りないことがたくさんあります。次号でも、引き続きこの問題をテーマとすることにします。商売を成功させるにはどうすればよいのか、を具体的に考えていきます。 現在の真島からちょっと補足 |
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