(第1回)〜 働いたのに給与が出ない!?〜
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ようこそ「人事の部屋へ」。
サトエこと佐藤栄一(サトウ エイイチ)です。
この度、真島先生に連載の機会をいただき、勤務社労士として人事部での日々の業務やトラブル事例、また、日頃行政に対して感じていること等々・・・皆さまにご紹介していければと思っております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
まずは、プロフィール・・・
昭和47年生まれの特定社会保険労務士(神奈川県社会保険労務士会所属)
民間企業に勤めながら大学院にて「在日コリアンの就労問題」を研究し、平成13年国際学修士の学位を取得。平成15年社会保険労務士試験合格。
得意分野は労働基準法をはじめとする労働法全般。現在、企業の人事部に所属。将来の開業に向け日々奮闘中! |
このコラムでは、専門的なことよりも、できるだけ日々の業務に則したことを述べさせていただきたいと思っております。したがって、すでに実務を行っている方には「当然のこと」も多く、退屈に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、勉強の合間に是非ご一読下さい。
なお、会社員にも守秘義務があるので、実際に起こった出来事を多少アレンジしてご紹介いたします。そのため、場面によっては不自然な箇所もあると思いますがご了承ください。
いつの日かこのコラムをもとに、皆様とお話ができればと思っております。
それでは、第1回目は実務を通して感じた人事部のあるべき姿について述べさせていただきます。
毎月25日。
サラリーマン、OLの方にとっては「待ちに待った給料日!」という人も少なくないのではないでしょうか?
当社に6月26に入社した山口さん(仮名)もその1人。
今回は、その山口さんから受けた一本の電話をもとにお話いたします。
7月25日、給料日当日の午前9時 業務スタートと同時に人事部の電話が鳴りました。
「働いたのに給与を支払わないとはどういうことだ!」という従業員からの一言で人事部の業務がスタートしました。
山口さんは、さらに興奮した口調で「給与を出さないどころか、会社に対して給与を支払えとは何事だ!」と一方的に話し続けてきたので、まずは落ち着いて従業員の話にじっくりと耳を傾けることにしました。(ちなみに、今回、山口さんの給料明細には、「○○円を会社所定の銀行口座に振り込んでください」と記載していました。)
さて、電話で内容を聞いているうちに、何故、山口さんがこのような電話をかけてきたのか理由が分かりました。しかし、人事部として従業員に対して正確な情報を伝える必要があるので、折り返し連絡する旨を伝え、電話を切りました。
山口さんの主張は次の通りです。
1.働いた3日分の給与が支払われないのはおかしい。
2.何故、従業員が会社に対して、○○円を支払う必要があるのか?
→いずれも労働基準法に違反していると主張しています。 |
人事部として次の事項を確認することにしました。
まず、山口さんを雇い入れる際に本人に明示した「労働条件明示書」の確認です。
労働基準法には、雇い入れの際に労働条件について、一定の項目を書面にて明示しなければならない旨の規定がありますが、今回はその中で以下の箇所が重要となってきます。
・就業時間:10:00〜19:00(実動8時間)
・休日:土曜、日曜、祝日
・給与:1,250円(時間給制)
・給与支給日:毎月25日(末締め、翌25日払)
・社会保険の適用:労災、雇用、健保、厚年 |
次に、「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」(※)において、生年月日、標準報酬月額の確認です。
なお、確認をした結果、山口さんの標準報酬月額は260千円で、標準報酬月額を保険料額表に当てはめると、健康保険料10,660円 厚生年金保険料19,494円でした。(介護保険は対象外です。)また、雇用保険料が194円かかることが分かりました。
| (※) |
「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」・・・「被保険者資格取得届」を提出すると、後日、社会保険事務所から事業主に対して送付されてくる書面による通知書。 |
結果として、山口さんに対する6月度の賃金は、支給額が1,250円(時間給)×8時間(労働時間)×3日分(労働日数)=30,000円に対し、控除額が健康保険料10,660円 厚生年金保険料19,494円 雇用保険料194円ということになります。
つまり、会社としては30,000円を支給したのですが、社会保険料等の控除額が支給額を上回ってしまった為に今回の問題が生じてしまったという訳です。従って、その旨を説明するために山口さんへ連絡をしたのですが、本人としては給与といえば手取額(振込額)しか意識しておらず、納得をさせるにはかなりの時間を要しました。皆さんは、雇用保険料や社会保険料が毎月の給与から控除されることは当たり前のように思っているでしょうが、新たに入社してくる従業員の中には、全くこうした知識のない人もいるのです。人事部としては、"知っていて当たり前の自分"を基準とするのではなく、"従業員の立場"に立って業務を行わなければならないことを痛感させられました。
今回のケースでは、会社は違法な行為をした訳ではありませんが、社員の雇い入れにあたって労働条件を明示する際に、賃金の支払い期間、支払日等の説明を丁寧に行うことによって避けることのできたトラブルであったと思われます。
起きてしまったトラブルを解決することも人事部の役割でしょうが、未然にトラブルを防ぎ、従業員が働きやすい環境を築くことが、人事部として、より重要な役割といえるのではないでしょうか?
すでに人事の業務に携わっている皆さん!これから勤務社労士となる皆さん!
企業において人事部の役割は単に法令を遵守すればよいというものではありません。
お互い、従業員にとって働きやすい職場環境を構築するために、常に"従業員の目線"で業務を行っていきましょう!
− 最後に −
第40回社会保険労務士試験を受験される方へ
社会保険労務士試験に出題される法律は、実務においても活用できる場がたくさんあります。(1回目のコラムで申し上げたかったのは、実務において法律は知っていて「当然」のこと。それにプラスαが必要であるということです。)
自分自身を信じて、最後まで全力で試験に臨んでください。
合格後の無限の可能性のために・・・
皆様のご健闘を祈っております。では、次号でまた会いましょう。
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